コラム
大企業が減資によって“中小企業化”するメリットとは?
2022年8月、大手旅行会社のエイチ・アイ・エスは資本金を247億円から1億円に「減資」することを明らかとしました。
このように大企業が減資によって“中小企業化”を行う背景には、企業内の財政健全化だけでなく、税負担軽減を目的とするケースが多いです。
コロナ禍によって減資を行う企業数が増加
税務上は資本金の額が1億円超の企業を「大法人」、1億円以下の企業を「中小法人」と定めており、税務上の取り扱いにもいくつかの違いが存在します。
コロナ禍においては業績が大幅に悪化する企業が増加しており、東京商工リサーチによると、2020年度(2020年4月~2021年3月)には、「減資」によって大法人から中小法人へと移行した企業数は997社(前期比39.4%増)へと急増しています。
資本金1億円以下に減資する税務上のメリットは?
資本金を1億円以下に減資し、税務上の「中小法人」となるメリットとしては、主に以下の内容が挙げられます。
- 繰越欠損金の全額控除
- 欠損金の繰戻し還付
- 軽減税率の適用
- 外形標準課税の適用除外
- 800万円以下の交際費の損金算入
- 30万円未満の少額減価償却資産の一括損金算入化
特に業績悪化などによって発生した赤字を、将来発生する黒字と相殺して納税額を減少させる「欠損金の繰越控除」については、大法人の場合には課税所得の50%が上限であるのに対し、中小法人であれば課税所得の全額を控除することが可能となります。
また黒字が発生した場合においても、中小法人であれば課税所得のうち800万円以下の部分には法人税率15%(大法人の場合には23.2%)が適用されるなど、中小法人に該当することで税務上のさまざまなメリットを享受できます。
コロナ禍による経営環境の大幅な変化に伴い、資本金1億円以下に減資し、“中小企業化”を実行する大企業が増加しています。
税務上の「中小法人」に該当することでさまざまなメリットが受けられる一方、信用力の低下を招くリスクもあるため、減資の判断は慎重に行いましょう。
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